(※をつけた語に関しては、文末に説明があります)
これまでの麻疹※や水痘※に対するワクチンは、毒性を弱めたウイルスを注射して、人体に抗体※を作らせるものが大多数でした。今回のワクチンは、これとは異なり、新型コロナウイルスのm-RNA※を注射するもので、生きたウイルスは体内に入りませんから、感染する危険はゼロに近いと思われます。 ただし、この種類のワクチンが数百万人単位で人類に接種されることは今回が初めてのことですので、予想されなかった副反応※が生じる危険はあります。これまでに分かっていることは、注射した部分が腫れて痛むなどの他に、全身の筋肉痛、だるさ、発熱、頭痛などが出現しているようです。
最も重篤な副反応は、『アナフィラキシーショック※』で、アメリカのデータでは、10万人に1名ほどの頻度で出現したそうです。今回のワクチン接種においては、アナフィラキシーショックが起きた人の75%が注射後30分以内に発症したということですので、注射の後、30分はその場所から動かないで様子を見るといった注意が必要です。万が一、アナフィラキシーショックが起きても、短時間のうちに治療を受ければ、命に関わることはほとんどありません。
ワクチンの効果は90%前後と発表されましたが、ウイルスが体内に入ってきても全く感染しなくなるということではなく、肺炎・呼吸困難などの入院しなければならなくなるような重症化が防げる、といった効果のようです。ですので、ワクチン接種を受けても、これまで行なってきた手洗い・マスク着用などの注意は、コロナ収束まで続けていただきたいと思います。
感染する危険が大きい医療従事者が先に接種され、重症化しやすい高齢者と糖尿病などの基礎疾患を持っている方がそれに続く予定です。高齢でない健康な方は最後になりますが、これまでの感染予防策をとりながらお待ちください。
※麻疹:はしかのこと
※水痘:水ぼうそうのこと
※抗体:ウイルスや細菌が体内に入ってきたときに、それらを攻撃するたんぱく質
※m―RNA:mはメッセンジャーの略。コロナウイルスがヒトの細胞に侵入する足がかりとなるスパイク(とげ)を作るもとになる物質です。これを注射するとヒトはこれに対して抗体を作って、ウイルスの侵入を防ぎます。
※副反応:薬剤が、期待されていない悪現象をもたらすことを『副作用』といいますが、ワクチンに関しては、薬剤ではありませんので『副反応』という表現を用います。
※アナフィラキシーショック:そばや小麦、柑橘類などの食物、薬剤一般、スズメバチなどの昆虫刺傷により発症することがあるアレルギー反応の最重症型で、治療が遅れれば、血圧低下・呼吸困難などにより生命に危険が生じることがあります。
令和3(2021)年2月19日
みやぎ県南中核病院 病院長 宮崎 修吉